2014年8月20日水曜日

第8回 ホテルニューグランド ザ カフェ

お盆も終わり、夏の盛りが過ぎようとしている日曜日。昼間の酷暑を避け、夕刻から横浜中華街を訪れました。


夕涼みがてら、街をそぞろ歩く人々、ディナータイムの食事客を待つ料理店の人々の、元気な声に熱気あふれる通りで、扉の奥に静かな空気が漂っていた老舗「同發」。
ディナーのコース料理は、定番的なメニューでしたが、ひとつひとつがしっかりとした作りで、昔ながらの中華料理の味でした。


食事の後、涼しい風を求めて海沿いの山下公園へ向かって歩く途中、思い立って、ホテルニューグランドの「ザ カフェ」を訪れてみました。
店内は静かで、落ち着いた時間が流れていました。


箱根の「富士屋ホテル」を訪れた時にも感じたのですが、クラシックホテルの、宿泊客、レストランやカフェの利用客、館内の見学だけの人、それらの誰にでも差別のない細やかで礼儀正しい接客は、「また必ず来たい」と思わせる、心を揺さぶるほどのサービス精神と、もてなしの品格があるのではないでしょうか。


ケーキセットを注文するとケーキが全種類飾られたお盆を持ってきて、好きな物を選ばせてくれるこのサービスが好きで、食事の後でもついケーキを注文してしまいます。四種類のプチフールはバタークリーム使用のケーキで小さな可愛らしさについ目を惹かれてしまいます。



中華街の帰りで、かなりの満腹状態でしたので、小さなチェリーロールにしました。砂糖漬けのチェリーを細かく刻んでちりばめてあります。小さなケーキ一つにも、きちんとナイフとフォークが添えられています。


砂糖漬けのチェリーの甘い味と赤い色がなんとも昭和なテイスト。中のバタークリームは程よく甘さを効かせてあり、しつこさが全くありません。食後で無ければ、確実にもうひとついただけると思いました。



連れの者が注文したアイスクリーム。
ガラスの器がクラシックホテルのムードです。あっさりとした軽めなバニラアイスクリームでした。



お腹も心も大満足で、涼しい風を求めて山下公園へと向かいました。
氷川丸が今日もロマンチックな姿で迎えてくれます。みなとみらいのカラフルな光も美しく、「ブルーライト横浜」を堪能した夜でした。



2014年7月6日日曜日

第7回 らんぶる


第7回 らんぶる
朝から強い雨が降り続く六月のある日、西口の茶道具店に所用があり、新宿を訪れました。
繁華街新宿に降るのは、演歌の世界のような銀の雨です。



あまり混み合わないお店でランチをとりたいと思い、訪れたのは「新宿サンパーク」の上階にある「レストランはやしや」。
ビルの入り口にある白いショーケースに並んだ料理見本は、エビフライやハンバーグを中心に和洋折衷で、早くも昭和感満点の雰囲気に圧倒されつつ、古いエレベーターで五階へ。
ドアが空くと、カラーブックス「東京の味」の世界が広がりました。

エビフライ定食は、セットのロールパンとソースのボトルにご注目ください。


こちらはその名も「昭和プレート」。
銀のお皿とソースポット、なぜかお小皿に紅生姜がつくのも微笑ましいサービスです。



昭和感たっぷりのランチの後、「らんぶる」へ向かいました。
1950年(昭和25年)創業。1955年(昭和30年)に現在の場所へ移転したそうです。
空席があることを祈りつつドアを開け、禁煙を希望すると地階へ案内されました。
すると昨秋純喫茶のイベントでお目にかかった店長さんが颯爽とお客様を誘導されていました。


地階は二層に分かれていて、年代物のシャンデリアが名曲喫茶の雰囲気を今に伝えます。
 

雑誌やインターネットなどの情報で訪れたレトロ好きな若い人の姿が目立つ中、見るからに商談という雰囲気で、ここが「らんぶる」で「名曲喫茶」であることを 「どうでもよい」 か 「知らない 」様子で長時間滞在している向きも見られました。
おおらかな店長さんは、どちらにも広い心でサービスに勤めておられました。


そんなことを思ううちに、ケーキとコーヒーが運ばれて来ました。
できるだけバタークリームが使われた物をと思い「アーモンドミルク」を注文。


表面に薄く生クリームがコーティングされて、スポンジの間にはバタークリームがサンドされています。
しっとりと柔らかいスポンジの食感に、アーモンドの風味の上品なバタークリームがよく合います。
このようなケーキは控えめで上品な味でないと、目眩がするほどしつこい味になりますが、全く軽々と頂いてしまいました。



連れの者が注文したチョコレートパフェ。
チューリップ型のガラスの器にしっかりと盛り上げられた生クリームは軽やかで、中のアイスクリームもさっぱりとした味でした。


懐かしさと、時代に適応した心配り。
両者がうまく調和して、今また新しいファンが増えつつある「らんぶる」さんはいつも品格を失わず穏やかです。
店長さんがお見送り下さり、再会を約してお店を後にしました。
心温まる穏やかな時間をありがとうございました。


2014年4月15日火曜日

第7回 ベルグフェルド長谷店

江ノ電の乗降客が少なく、普段行列ができるお店も誰も並んでいない4月中旬の鎌倉。GWを控えて、嵐の前の静けさなのか、こんなに穏やかな鎌倉は久しぶりで、人も少なく歩きやすいので、お稽古の帰りに由比ヶ浜大通りを長谷まで歩きました。観音様と大仏様へ通じる四つ角の少し手前に「ベルグフェルド」があります。



本店は金沢街道沿いにあり、ここは長谷の支店ですが、閑静な住宅街にある落ち着いた雰囲気で長年の地元のファンが多いお店です。名前の通りドイツのパンやお菓子を得意とし、プレッツェルなどの焼き菓子やパウンドケーキはやや固めな食感のものが多いのが特徴です。平日の昼間は鎌倉の素敵な奥様方が談笑する姿が目立ちます。


注文したのは「小ネズミ」という名の名物ケーキです。バタークリームにコーティングされた中にパウンドケーキがぎっしりと詰め込まれて、可愛らしい見た目も人気です。白ネズミはパウンドケーキのラム酒を殆んど感じないマイルドタイプでチョコレートの黒ネズミはラム酒の効いた大人の味です。





中身のパウンドケーキはフルーツとナッツが香り高く、次はパウンドケーキを単品で注文してみたいと思いました。


新緑が美しい晩春の鎌倉。あの映画を思わせる細道には静かに時が流れていました。



2014年4月13日日曜日

第6回 柏水堂

暖かい陽光のもと、小宮山書店さんの前の山桜が清楚な花をそよがせる春の日。神保町の古書街でカラーブックスを探しながら、ランチを楽しみに、学士会館へ立ち寄りました。昭和3年の建造で、国の有形登録文化財にもなっている建物です。


軽食やランチ、お酒も楽しめるラウンジ「THE SEVEN'S HOUSE」。店内には上品な高齢の紳士婦人が目立ち、品格ある雰囲気にぴったりの素敵な方々でした。



ロビーにはなぜか年代物のKAWAI製の足踏みオルガンがありました。ストップで音色を変えることのできる、高級なタイプのオルガンで「エリーゼのために」を弾いてみました。実に数十年ぶりにオルガンを弾いたのですが、子供の頃に身につけたものは案外忘れないものですね。


ランチの後は、古書街へ戻り再びカラーブックスを探し、歩き疲れた頃に午後のお茶の時間となり、土曜日なので、営業していると思い、柏水堂へ向かいました。ショーケースの中の可愛らしいケーキと反対側にはこれまた可愛らしい焼き菓子類が並んでいます。


奥にある喫茶コーナーへ。テーブルと椅子がカラーブックスの世界です。柏水堂は昭和4年創業です。創業当時は現在の反対側にお店を構えていたそうですが地下鉄工事のための移転など数々の苦難を乗り越え「乙女のプードルケーキ」は守られました。


バタークリームのデコレーションが展示されたガラスケースの中から、お気に入りのケーキを選びます。




「メゾン」(チョコレート)と「レモンパイ」ふっくらのメレンゲにレモンが濃い!チョコレートのバタークリームもあっさりとした味で


「プードル」と「ロワール」柏水堂に来るとケーキを二個注文する人が多いと言われていますが平気で二個いただける軽さと味わいです。


「プードル」は柏水堂を代表する人気のケーキです。バタークリームの味は上品で甘さ控えめ、バタークリームが苦手な人でも大抵は気に入ってくれます。


プードルケーキの中にはジャムがサンドされ微かに酸味を感じるところがバタークリームと良い相性です。チェリータルトの「ロワール」は甘酸っぱい小さなチェリーがお行儀良く並んだ少し硬めのタルトのまわりにチョコレートが薄く塗ってあります。


お隣の席に、老婦人が来店され、楽しそうにケーキを選んでいました。一度席へ戻られてから「もう一度見て来るわ」と言ってどれにするかガラスケースの前でケーキを見ているお姿は完全に女学生に戻られていたように見えました。微笑ましい光景も神保町という町の歴史あるお店ならでは。



フランス語で書かれた手書き伝票がおしゃれ。これから何度もお伺いしたい大切なお店です。


2014年3月17日月曜日

第5回 鎌倉 カフェ ロンディーノ

梅の盛りを過ぎ、沈丁花や遅咲きの水仙が香る早春の鎌倉。





お茶のお稽古を終え、程よい緊張の後自然に足は御成通りの入り口にある「カフェロンディーノ」に向かいました。


昭和42年にオープンし地元の人々が多く訪れるお店です。グルメサイトや雑誌で紹介されるプリンが有名になり、「イワタ」同様に近年各地から訪れる人が多くなっています。


テーブル席は満員でカウンターに案内されました。しかも目指すプリンは終わっていました。そこで洋梨のタルトとコーヒーを注文しました。プリンの中に洋梨が入ったタルトで、キメ細かなプリンの食感を味わえます。コーヒーは深みがありながらマイルドで、カップは昭和の純喫茶風です。


以前訪れた時のプリンの写真をアップします。
卵がしっかりと使われてキメ細かで滑らか、味はあっさり目です。